
年金はいつから受け取るべきか――
多くの人が直面する悩みのひとつです。
60歳から早く受け取れる「繰上げ受給」。
70歳まで遅らせて増額できる「繰下げ受給」。
今回は、62歳で繰上げ受給を選んだ男性のリアルな体験を紹介しながら、
専門家・川島弘美さんの視点で、後悔しない判断のヒントをお届けします。
【相談者の声:佐藤正夫さん(67歳・元自営業)】
佐藤さんは、埼玉県で町工場を営んでいた元自営業者。
60歳で事業をたたみ、収入がゼロになったことから62歳で繰上げ受給を選択しました。
月々の年金は約4万2千円。
しかし、思ったより少ない金額に驚き、67歳になった今、こう語ります。
「あのときは“今すぐお金が欲しい”一心だった。
でも、今思うと、もう少し待ってもよかったのかもしれない…。
まさか、これほどまでに差が出るとは思わなかった。」
冬には灯油を節約して風邪をこじらせ、入院も経験。
貯金も底をつき始め、将来への不安は増すばかりです。
【専門家の解説:川島弘美さん(73歳・シニアライフカウンセラー)】
▶ 繰上げ・繰下げ受給とは?
- 繰上げ受給(60~64歳):早く受け取れる代わりに、年金が最大24%減額(一生涯)
- 繰下げ受給(66~75歳):遅らせるほど最大42%の増額が可能
一度選ぶと取り消しできないため、慎重な判断が必要です。
▶ 「どちらが得か」は人によって違う
平均寿命を前提にすると、80歳前後で損益分岐点が訪れます。
「長生きしそうな人」は繰下げ、
「今すぐ必要」「健康に不安がある」人は繰上げ、という考え方もあります。
【判断するための5つの視点】
川島さんは、受給タイミングを決めるために「次の5つを考えてみて」とアドバイスします。
✅ 1. 今の貯金・収入は?
収入や蓄えが十分であれば繰下げも視野に。
収入ゼロなら、支援制度も含めて慎重に判断。
✅ 2. 健康状態は?
長寿家系か、持病があるか。
将来の医療・介護費の見通しも含めて考える。
✅ 3. 働く予定はあるか?
在職老齢年金の影響に注意。
給与が多いと年金が減額されることも。
✅ 4. 家族の支援はあるか?
同居や援助がある場合は繰下げの余裕も。
一人暮らしなら今の生活費を優先したい。
✅ 5. 家賃・ローンなどの固定費は?
持ち家か賃貸かで家計は大きく変わる。
固定費の把握は判断の基本。
【後悔しないために】
「“あのとき知っていれば…”という声を、私は何度も聞いてきました。」
そう語る川島さんは、“知ること”が最大の防御だと言います。
年金の受給は、人生設計そのもの。
“損得”だけでなく、“どんな老後を生きたいか”という視点が、
本当の意味での正解を教えてくれるかもしれません。
【動画でも詳しく解説中】
今回の内容はYouTube動画でもご覧いただけます。
体験談と専門家の解説をわかりやすくまとめた構成です。
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