持ち家なのに苦しい…老後の“見えない生活費”の落とし穴

はじめに

「家賃がかからないから安心」と思っていた持ち家の老後。しかし、実際には固定資産税、修繕費、火災保険など、さまざまな見えない出費が家計を圧迫している現実があります。
今回は、築43年の一戸建てに住む74歳の高橋佳代さん(仮名)の体験をもとに、老後の住まいにかかるコストとそれに対する支援制度、そして今からできる備えについてご紹介します。専門家の川島弘美さんのアドバイスも交えながら、持ち家の現実と解決の糸口を探ります。

高橋佳代さんの体験談

高橋さんは、かつて夫と二人で建てた木造2階建ての家に、長年大切に暮らしてきました。
子どもたちが駆け回り、正月には家族みんなで七輪でお餅を焼いて、笑い声が絶えなかった日々…
そんな温かな思い出が詰まった家。しかし、夫が亡くなり、子どもたちは遠方に住むようになった今、高橋さんはひとりでその家に縛られながら暮らしています。

実際、昨年の秋には2階のトイレが水漏れして修理に8万円、その後屋根の一部が剥がれて雨漏りが発生し、27万円もの修繕費が必要になりました。さらに、固定資産税は毎年約8万5千円、火災保険も5年更新で12万円ほどかかります。
高橋さんの年金収入は月約10万円ですが、これらの出費が重なると、実質的な生活費は大幅に圧迫され、貯金を切り崩さなければならない状況になっています。

「家があるのに、どうしてこんなにもお金が足りないのか…このまま住み続けて大丈夫なのか、不安で仕方がありません。」

持ち家にかかる“見えない”コストとは

持ち家は家賃がかからないというメリットがありますが、その代わりに以下のような固定費や修繕費が発生します。

固定資産税・火災保険

  • 固定資産税
    地域や住宅の評価額により年間5万円~10万円ほどかかります。
  • 火災保険・地震保険
    数年ごとの更新が必要で、保険料がまとまった金額となるケースもあります。

修繕費・管理費

  • 修繕費
    屋根の補修、外壁のひび割れ、水道設備のトラブルなど、年に数十万円単位で発生することも。
  • 管理・メンテナンス費
    庭の手入れ、害虫駆除、雪かきなどの費用が、月々の負担として計上される場合もあります。

実際に高橋さんの場合、これらの出費は月々2~3万円相当にもなり、年金収入だけでは到底まかなえない状況です。

支援制度や対策のご紹介

こうした「見えない出費」には、知っておくべき支援制度や、今すぐできる対策があります。以下は、専門家の川島弘美さんのアドバイスです。

自治体の住宅支援制度

  • バリアフリー改修助成
    自治体によっては、耐震補強やバリアフリー改修に対して最大20万円前後の補助が出る場合があります。
  • リフォーム助成金
    築年数の古い住宅に対して、一定の助成金が支給される地域もあります。

売却や住み替えの検討

  • リースバック制度
    自宅を売却して、そのまま賃貸として住み続けることで、資金化を図る制度です。
  • 高齢者向け賃貸住宅・サービス付き高齢者住宅
    より負担の少ない住まいに移る選択肢も検討してみましょう。

相談できる窓口

  • 地域包括支援センター
    介護、医療、住まい、福祉に関する総合相談窓口として活用できます。
  • 市区町村の福祉課や介護保険課
    助成制度や支援策について、具体的な情報を得られます。
  • ケアマネジャーや社会福祉協議会(社協)
    生活費の見直しや支援制度の活用について相談できる専門家がいます。

「何もせずに抱え込むのではなく、まずは小さな疑問から、信頼できる窓口に相談してみることが大切です。」

まとめ:持ち家を“安心の拠り所”に変えるために

持ち家であることは、確かに経済的な負担を減らすメリットがあります。しかし、同時に固定資産税や修繕費といった“見えにくい出費”が、老後の生活費を圧迫する現実もあります。
家を守るためにかけてきた努力が、今、負担として返ってくる。これは、単に個人の問題ではなく、少子高齢化や空き家問題といった、日本全体の社会課題とも密接に関わっています。

今からできる対策として、住まいの状態を把握し、必要な補助制度を調べ、信頼できる窓口に相談することが、安心して暮らすための第一歩です。
「家があるのに、どうしてお金が足りないのだろう?」という疑問は、知識と情報を武器に、必ず解決の糸口が見つかるはずです。


最後に

持ち家があるから安心という常識にとらわれず、今の現実と向き合い、必要な支援制度を積極的に活用していくことが大切です。
もし、あなたやご家族が同じような悩みを抱えているなら、まずは地域の包括支援センターや福祉課に相談してみてください。
「知ること」が未来への安心に変わる、その第一歩を、ぜひ踏み出していただきたいと思います。

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