なぜ騙される?年金受給者が引っかかる「還付金詐欺」の罠

年金生活者を狙った「還付金詐欺」が全国で急増しています。今回は、68歳の女性・山本久子さん(仮名)が体験した被害をもとに、なぜ騙されてしまうのか、その心理的な背景や手口の巧妙さ、そして未然に防げる“たったひとつの言葉”についてお伝えします。


「ATMで返金される」はウソでした

山本さんは横浜市内に一人で暮らす68歳。夫を数年前に亡くし、国民年金と週3回のパートで暮らしを支えていました。ある日、電話が鳴ります。

「田島ハツエ様でいらっしゃいますか? ○○市役所の保険課です。医療費の過払い金が出ており、 本日中に手続きいただければ返金できます。」

そう名乗る男性の声は、穏やかで、親切そうでした。

「手続きはATMでできます。電話をつないだままご案内します」と言われ、疑いもせず、コンビニのATMへ。

操作を指示されるままに行った結果、“お金を受け取る”どころか、50万円近くを振り込んでしまっていたのです。


なぜ、騙されるのか?

この詐欺のポイントは、相手が“役所の人間”を装い、 「返金されます」「今日中に」「手続きは簡単です」と、 安心感と焦りを同時に与えてくるところにあります。

さらに、「ATMで受け取れる」という誤解を利用して、 実際には振り込みをさせているのです。

年金生活者のように、日常的に役所や医療機関と接点がある方ほど、 このような言葉に“心当たりがある”と感じ、騙されやすい傾向があります。


騙されなかった人の「一言」

一方、同じような電話を受けた82歳の田島ハツエさん(仮名)は、 孫の言葉を思い出し、とっさにこう言いました。

「じゃあ、うちの孫が帰ってからATM行きますね」

すると相手は一気に態度を変え、焦った口調で「今すぐでないと無効になる」と言ってきました。

この“焦らせ方”に違和感を感じた田島さんは、電話を切り、娘に相談。 詐欺だと判明し、未然に被害を防ぐことができました。


騙されないためのチェックリスト

  • ATMで「返金される」という案内はすべて詐欺です
  • 行政機関が電話で口座番号や暗証番号を聞くことはありません
  • 「今すぐ」「今日中に」など急がせる言葉が出たら、一度切って確認を
  • 家族や周囲と「何かあったら相談する」習慣を作っておきましょう

最後に

詐欺の被害は、真面目に生きてきた人ほど遭いやすいと言われます。 「私は大丈夫」と思わずに、少しでも“変だな”と感じたら、 誰かに相談することが、あなたの年金と心を守る第一歩です。

この記事が、あなたや大切な人を守るきっかけになれば幸いです。