はじめに
年金だけで暮らす老後、「まず削るのは食費」という人は少なくありません。
ですがその節約、知らないうちに体をむしばんでいるかもしれません。
今回は、76歳で一人暮らしの女性・山田ふみ子さん(仮名)の体験を通して、
高齢者の栄養不足のリスクや、無理のない食生活の工夫についてご紹介します。
節約のつもりが、健康を壊す原因に?
山田さんの年金は月9万円。
家賃や光熱費、通院の薬代を払うと、食費にかけられるのは月1万円ほど。
朝は白米と漬物、昼は納豆ごはん、夜は抜くことも。
野菜も果物も、もう何か月も買っていない――
そんな生活を続けていたある日、山田さんはふらつきとだるさを感じ、病院へ行きました。
診断は、“栄養不足”。
「まさか、ちゃんと食べてないだけでこんなに体が弱るなんて…」
そう語る山田さん。
節約しているつもりが、命にかかわる健康問題を引き起こしていたのです。
高齢者の「かくれ栄養失調」が増えています
厚生労働省の調査では、75歳以上の約3人に1人が“低栄養”の可能性があると言われています。
特に一人暮らしの高齢者は、
- 自分のために料理しなくなる
- 食事が面倒になる
- 食費を切り詰めすぎる
こうしたことが重なり、気づかぬうちに体力・免疫力が落ちていくことがあります。
食費の節約が医療費の増加につながる?
食費を削る
↓
筋力・免疫力が落ちる
↓
体調を崩す・病気になる
↓
医療費がかかる
このように、食費を削ったことが結果的に生活費を圧迫してしまう「悪循環」が起こるケースが増えています。
つまり、“食費の節約”が“命のコスト”になることもあるのです。
無理なくできる栄養対策
専門家の川島弘美さんによると、大切なのは「完璧を目指さず、できる工夫から始めること」。
以下のような方法が紹介されました。
栄養価が高くて安い食材
- 卵
- 豆腐・納豆
- 小松菜・もやし
- ちくわ・ツナ缶
火を使わずに食べられるものや、日持ちするものも多く、調理が苦手な方にもおすすめです。
調理や買い物の工夫
- スーパーの夕方の割引を利用
- 冷凍野菜やパウチ惣菜を活用
- 一品で栄養がとれる炊き込みご飯や具だくさん味噌汁などを取り入れる
支援制度の活用
- 地域包括支援センターへの相談
- 高齢者向けの配食・宅配弁当サービス
- 地域によっては食費補助の制度もあり
「どこに相談すればいいかわからない…」という方は、まずはお住まいの市区町村や地域包括支援センターへ問い合わせてみてください。
まとめ:「ちゃんと食べたい」と思っていい
「節約しないと生活できない」
「食費はぜいたくだから、我慢しなきゃ」
そんなふうに、食べることを自分に許せなくなっている方も多いのではないでしょうか?
でも、食事は、健康を守るための“命の生活費”。
少しの意識と工夫で、体調も、気持ちも、ゆっくり変わっていくはずです。